小説

成田名璃子「東京すみっこごはん レシピノートは永遠に」

東京すみっこごはんシリーズ完結編。 「東京すみっこごはん」とは、下町のとある商店街を抜けた一角にある共同台所。その日に集まった会員がくじを引いて食事を作り、みんなで文句を言わず美味しく食べましょう、という集まり。このシリーズは、この「すみっ…

【完結編】入院中に読んだ本の一言感想とリンク

1ヶ月と少しの入院で読んだ本の一言感想を、読んだ順に更新していこうと思う。詳しい感想は個別の各記事のリンクを貼るので飛んで見てほしい。 この記事は、その都度追記して更新していく。 (最終更新(完結):2024/05/30) 1 北欧女子オーサが見つけた日…

第一芸人文芸部 創刊準備二号

文芸大好きな芸人さんたちの作品集。ラインナップは次の通り。 月の裏側 又吉直樹 書評 ピストジャム ハチマキ 山名文和 俳句と散文 村上健志 ショートショートレストラン ファビアン 歌詞とエッセイ トニーフランク 分岐文 赤嶺総理 前回は又吉直樹、ピスト…

ストロベリーナイト(誉田哲也)

溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された! 警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは? クセ者揃いの刑事…

「編集に怒られる!」(最東対地の嗤う壺企画)

最東対地の呼びかけで、最東対地、川越宗一、尼野ゆたか、寺地はるな、和泉桂、額賀澪、逸木裕、水沢秋生が「編集に怒られる!」をテーマに書いた作品集。こんなの面白いに決まってるでしょ。 そして鈍器は振り下ろされる(逸木裕) 自分の作品が売れないこ…

成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈)

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。 各界から絶賛の声続々、いまだかつてない青春小説! 2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。 コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが………

文学フリマ東京38に参戦してきたので購入品など

曇天。テクテクたくさん歩いて開場10分前に流通センターに到着、雨。15分ほど並んで開場入りすると、混んではいるものの動けないほどの混雑だった前回前々回に比べればかわいいものだ。おそらくは有料化のおかげだろう。当たり前だけど人混みはとても疲れる…

ディスコ探偵水曜日(舞城王太郎)

迷子専門の探偵をしているディスコ・ウェンズデイはある事件をきっかけに梢と暮らしている。あるとき梢に未来の梢がやってきて、物語が動き出す。やがて探偵が連続自殺を始め、ディスコも運命にいざなわれるようにしてパイン・ハウスに向かう。そこで待って…

本の背骨が最後に残る(斜線堂有紀)

「本の背骨が最後に残る」「死して屍知る者無し」「ドッペルイェーガー」「痛妃婚姻譚」「『金魚姫の物語』」、「デウス・エクス・セラピー」「本は背骨が最初に形成(でき)る」からなる短編集。特に好きだと思ったのは、表題作と「死して屍知る者無し」だ…

臆病な僕らは今日も震えながら(汐見夏衛)

虹色の夢を見る少女きららは、母の命と引き換えに生まれた。母親の記憶を持つ父親と姉と壁を感じている。またなんでもできてハキハキしている姉と異なり、クラスでも目立たない存在のきららは、どこにも居場所がないと感じる。そんなある時、あの虹色の夢の…

君の話(三秋縋)

技術が発展し、過去の記憶を消したり、架空の記憶「義憶」を埋め込んだりすることができるようになる。主人公の父親も、義憶の中にだけ存在する義者を妻として愛し、母親は主人公の他に4人の子どもを持った。19歳になった主人公は、あるとき記憶を消す「レー…

キネマ探偵カレイドミステリー 輪転不変のフォールアウト(斜線堂有紀)

第三部。 「第一話 逆光無効のトライアンフ(バック・トゥ・ザ・ヒューチャー)」「第二話 依然必然のアクチュアリー(ラブ・アクチュアリー)」「第三話 輪転不変のフォールアウト(俺たちに明日はない)」 いよいよ大詰め!内容は読んでくれ。 結構リアル…

キネマ探偵カレイドミステリー 再演奇縁のアンコール(斜線堂有紀)

第二部。 「第一話 再演奇縁のオーバーラップ(スタンド・バイ・ミー)」「第二話 自縄自爆のパステルステップ(アーティスト)」「第三話 正誤判定のトレジャーハント(バグダッド・カフェ)」 留年云々は解決しなかったが、結局仲良くなった奈緒崎と嗄井戸…

放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件(知念実希人)

児童書。ミステリの入門書。 陸、美鈴ちゃん、天馬くんの3人は、小学校の一角に部室を作り、放課後ミステリクラブと称して時間を過ごしていた。あるとき、プールの授業が中止となる。プールに金魚が泳いでいたせいだ。真理子先生に依頼され、天馬くんはその…

マリアビートル(伊坂幸太郎)

殺し屋シリーズの第二弾。 息子を殺しかけた高校生を殺すためにアルコール依存症の木村は画策し、犯人の乗る新幹線をつきとめ復讐しようとする。蜜柑と檸檬は業界のドン峰岸の息子を助け、仙台まで連れて行く任務を課される。七尾は新幹線に乗ってトランクを…

ランチ酒(原田ひ香)

全十六話からなる連作短編。犬森祥子は友人の、「夜間の見守り」を提供する会社、中野お助け本舗で働いている。そのため仕事終わりがランチどきとなり、毎日のランチ酒を心の拠り所として生きている。話を進めるにつれ明らかになる祥子の背景なども興味深く……

キミトピア(舞城王太郎)

「やさしナリン」「添木添太郎」「すっとこどっこいしょ」「ンポ先輩」「あまりぼっち」「真夜中のブラブラ蜂」「美味しいファワーヘッド」からなる短編集。 なんか主人公たちがみんな独善的で頭でっかちで誰にも共感できない。これを最初に読んだら舞城ファ…

キネマ探偵カレイドミステリー(斜線堂有紀)

「第一話 逢縁奇縁のパラダイス座(ニュー・シネマ・パラダイス)」「第二話 断崖絶壁の劇場演説(独裁者)」「第三話 不可能密室の幽霊少女(ブレア・フィッチ・プロジェクト)」「第四話 一期一会のカーテンコール(セブン)」 英知大学は入試はもちろん定…

かがみの孤城(辻村深月)

学校で居場所をなくしたこころは、あるとき自室の鏡が光っているのに気づく。鏡の中に入るとそこは城のような建物。同じ年代の子どもたちが7人集められ、「鍵」を探し「部屋」を見つけると願い事が叶うのだと言われる。7人はそれぞれに事情を抱え、かがみの…

未来職安(柞刈湯葉)

「未来職安」「未来就活」「未来家族」「未来作家」「未来医療」「未来雇用」からなる連作短編集。「生活基本金」が全国民に支給されるようになった未来。働いている生産者は、全消費者の1パーセント程度となった。生産者が世の中の富を生産し、所得税を納…

横浜駅SF(柞刈湯葉)

その朝、富士山は黒かった。 昨日までコンクリートで覆われていた白富士が、一夜にしてエスカレータの黒一色に染められたのだ。それは長かった梅雨が明け、夏が来たと言う印だった。「斜度が影響している」 海岸に座った教授が藤の方を見ながら言う。「構造…

楽園とは探偵の不在なり(斜線堂有紀)

天使が降臨し、二人殺すと地獄に引きずり落とされる世界になった。世界では連続殺人がなくなった。そのことで探偵の仕事はなくなる。地獄の存在が直接的に殺人件数を減らしたことで、どれだけ事件を解決しても殺人を止められなかった探偵の青岸焦は無力感を…

地雷グリコ(青崎有吾)

「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」「エピローグ」からなる連作短編集。 高校生の真兎が、文化祭の模擬店出店場所を巡って生徒会の椚と戦う「地雷グリコ」に始まり、どれも真兎がヒリヒリと…

横浜青葉高校演劇部 コント師になる!?(田中ヒロマサ)

演劇部部長の風里が部員が集まらずに途方に暮れていると、中学時代一緒に演劇をやっていた海斗から、コントのコンテスト「エンペラーオブコント」への出場を持ちかけられる。初めは渋っていたが、海斗の熱意に押されて…… いやーよかった。文章が特別うまいと…

シャーロック・ホームズの凱旋(森見登美彦)

まったく仕事ができなくなり引きこもりがちになってしまったシャーロック・ホームズとワトソンが「京都」の街でわちゃわちゃと謎に見舞われ、再生していく物語。「京都」??? まったく予想だにしていなかった設定だった。前情報なく読み始めたので、京都の…

回樹(斜線堂有紀)

「回樹」「骨刻」「BTTF葬送」「不滅」「奈辺」「回祭」からなるSF短編集。SFだけれど、宇宙や科学の知識は要らず、誰でも楽しく読める。 どの作品も「そういうことがあったのかもしれない」「そういう未来があるのかもしれない」と思えるリアリティのある小…

最後にして最初のアイドル(草野原々)

「最後にして最初のアイドル」「エヴォリューションがーるず」「暗黒声優」 まず表題作。自殺したアイドルで親友のみかを助け、アイドルとして復活させるために医学生の眞織は暗躍する。あるとき異常なほど規模の大きな太陽フレアがおこり、悍ましい量の磁力…

【読書感想】走馬灯のセトリは考えておいて / 柴田勝家

「オンライン福男」「クランツマンの秘仏」「絶滅の作法」「火星環境下における宗教制原虫の適応と分布」「姫日記」「走馬灯のセトリは考えておいて」の七作からなるSF短編集。といってもSF的知識(未来、科学、宇宙)はとくにいらないのですっと読める。 す…

グラスホッパー(伊坂幸太郎)

グラスホッパー (角川文庫) 作者:伊坂 幸太郎 KADOKAWA Amazon 殺し屋シリーズの第一作。話し手を変えて変えて複数人の視点から物語が紡がれていく。主人公は鈴木。殺された妻の仇を討つために、闇の世界に足を踏み入れる。が、復讐相手が自分以外の誰かに殺…

ゴールデンタイムの消費期限(斜線堂有紀)

ゴールデンタイムの消費期限 (文芸単行本) 作者:斜線堂有紀 祥伝社 Amazon 「天才小説家」である綴喜文彰は、高校時代、小説が一作も書けないでいた。進路選択を迫られるようになる中で、担当編集者から、あるプロジェクトの依頼を受ける。それは、同じ天才…