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哲学史入門Ⅰ 古代ギリシアからルネサンスまで(斎藤哲也編)

 

「試験に出る哲学」の著者斎藤哲也が、哲学研究の第一人者たちにインタビューをしていくという形式の哲学史の入門書。古代ギリシア・ローマの哲学を納富信留、中世哲学を山内志朗ルネサンス哲学を伊藤博明にインタビューする形式で解説していく。

個人的にカントを勉強しようと思って書店へ赴いたときに買った一冊。カントの解説書がまったく売っていなくてうろちょろしていたときに目に入ったもの。そうだなー古代から流れを知っていないと意味がないよなーとか思って購入してみた。

哲学を学ぶのは教養学部時代以来なのでまったく何も覚えていない。そのときも古代、中世、ルネサンスの哲学には見向きもせずにニーチェに溺れたりデカルトに感心したり科学哲学の上っ面だけを学んでいたのでなんの下地もない。高校倫理も朧げな記憶しかない。つまり、まったくの初学者と同等である。

そんなわたしが読んでも、本書はわかりやすく、哲学により興味を持つことができるものだった。インタビュー形式なので入りやすいのもよかった。

本書では各章の冒頭にまず斎藤哲也によるイントロがクションがあり、各章を読むにあたって必要な最低限の知識や背景などが説明されている。その上でインタビューを読むから、理解しやすい。また、各研究者が平易な言葉で丁寧に説明してくれるため、「ん?」と引っかかっても少し前に戻って考えると初学者でもうっすらわかった気になれるくらいになる。

冒頭で千葉雅也も話しているが、哲学者の名前を一人でも多く知ることで、哲学の入門には近づくのだと思う。そういう意味で、めちゃくちゃたくさんの哲学者の名前が出てきて、それぞれの思惑や功績が具体的に記されているので、この入門書は入門にふさわしいのではないかと思う。

わたしは哲学を体系立てて知らないから、この本が本当に哲学史の入門書として必要な知識をすべて揃えているのかはわからない。が、読んでいて楽しく、いろいろな聞き齧ったことのある概念を整理できたこと、各時代のつながりがわかったことだけでも良かった。ざっと分かるだけでも、言うように、意味があることなのだと思う。

個人的には、ルネサンス期のピーコ・デラ・ミランドラが好きになった。「人間の尊厳について」というそれまでの概念をくつがえすような自由意志論についての演説がよかった。これまでのすべての哲学や思想を統合することを夢見ていたというのも、それこそ夢があって本当にいい。

「人間の尊厳について」をamazonで検索したら古書しかなく10,000円近くしたので読めそうもない。区の図書館になんてないだろうし、あったとて2週間では読めないだろうし。と思ったら、検索したら訳がPDFで公開されていたので読んでみようと思う。

この出会いをくれた本書に感謝しておきたい。次巻ではついに目的だったカントが出てくる。