詐欺師武沢はこの数ヶ月、テツとコンビを組み仕事をしていた。テツは鍵のトラブルを扱う店を営んでいて、あるとき武沢の家の鍵に細工をして騙そうとしたのを武沢に見抜かれる。武沢はテツを警察に突き出すのではなく、コンビを組んで一緒に詐欺を働くようになる。二人は共同生活を送るが、ひょんなことからさらに三人を含めた五人での同居生活が始まる。一つの事件をきっかけに、各人の敵(恨みの矛先)が同じ人物だと分かり、五人による復讐劇が始まる……
道尾秀介の作品は初めて読んだ。めっちゃミステリー好きの人がおすすめしていたので勝手にもっとガチガチの推理ミステリーなのかと思っていたらそうではなく、ミステリー要素に加え、人間の弱さとか強さとかも表現されていて、良い読後感を味わえる。終盤の「ああよかった」がさらにラストで回収されていく伏線を辿り「最高じゃん」に変わる。
最高じゃん。
作中で貫太郎がこう話す。
あのですね、理想的な詐欺はですね、相手が騙されたことに気づかない詐欺なんですよ。それが完璧な詐欺なんです。でも、それと同じことがマジックに言えるかというと、これが違う。まったく反対なのです。マジックでは、相手が騙されたことを自覚できなければ意味がないのです。
そういう意味で言うと、この作品は詐欺師を主人公にした壮大なマジックということになる。最後に謎とも思っていなかった謎が明かされて、そこではじめてこの作品の最大の救いに気付くことができる。作者が読者を騙し切ってはいけないというのはあらゆるミステリがそうなのかもしれない(読み慣れてないけど、普通ネタバレするでしょ?)が、この作品はとくにその要素が強い気がする。マジックであることに大きな意味がある。
一人一人の心情が掘り下げて描かれているわけではないが、それぞれが大きく深い傷を負っていて、それを出来事を通じて克服していく。その過程もとくに詳しい描写はないのだが、各人物の心情にフォーカスして考えると、一つ一つの出来事の必然性に気付かされる。それがしかもああいうふうに仕掛けられていたなんて!
でももちろんすべての傷が癒されるわけではないんだろう。過去は消せないから。解釈のし直しはできるけれど、出来事は変わらないから。だけど生きていくんだよねえ、人は。
なんというのかねー。いい(語彙力)。
映画化されているようなのでこの後観てみようかと思います。
わたくしからは、以上です。
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今日マクドナルドウーバーイーツしようかなー
— mah_ (@mah__ghost) 2024年6月6日