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【読書感想】死体埋め部の悔恨と青春 / 斜線堂有紀 , 死体埋め部の回想と再興 / 斜線堂有紀

あるとき英智大学新入生の祝部は、大学の帰り道で襲ってきた男を逆に殺してしまう。そこに織賀というやはり英智大学の学生が現れ、助けてくれると言う。織賀の車のトランクに死体を詰め、後部座席に乗り込むと、隣の座席にはまた別の死体が乗せられていて……

 

斜線堂有紀の送る部活動青春モノ……但し活動内容は依頼を受けた死体を山に埋めること。という、ちょっと意味の分からない設定。
「悔恨と青春」は四話、「回想と再興」は三話構成になっていて、それぞれの話の大枠は(厳密位は違う話もあるが)、死体を埋めに行くまでの車内で、どうやってその死体の人物は殺されたのか、なぜ殺されなければならなかったのかを推理するというもの。

まず、場面設定が面白いと思った。わたしはミステリを読み慣れていないので、こうした推理の様式がよくあるものなのかは分からないけれど、楽しく読んだ。

 

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基本は青春小説。さまざまな出来事を通じた祝部の心の動きが楽しいというかそこが肝の小説なのかな。

死体埋め部に無理やり巻き込まれた祝部が、屈託のない織賀にどんどん愛着を覚えてその悲惨な過去に思いをよせていく。二作目の織賀が不在だったルート(Route 不在)の、祝部が織賀を救いたかったと思うところがすごくよかった。圧倒的不在ルート派である。

深刻な状況なのにそこまで深刻になりきらない、悲壮感が無い、癖がないので読みやすい。まあでも警察に逃げ込めよで終わらせちゃう人はいるとは思うけれども……そう言う意味ではお話のために人物が動いているところがあるかもしれない。それはでも、推理小説だとまああることなのかもしれないけれど。

でも基本的に楽しい(と言っていいのか分からないが)し、推理も面白い。ミステリーって読み慣れていないけれど、このくらいビュンって飛躍する推理って普通なのかしら。

だけど、これRoute 不在にしても Route 再会にしても、もう祝部は逃げることができないのだよな。そう言う意味では破滅の物語なので、恐ろしさが根底には流れていたのかもしれない。し、なんかそれを思うとつらくなってしまうな。

良作でした。