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【読書感想】永遠についての証明 / 岩井圭也

野生時代新人賞を受賞した岩井圭也のデビュー作。短めの13章からなる。各章で視点人物と時系列が変わるので、そういうのが苦手な人は一定数いると思われるが、まあよき物語なので読んでみてほしい。

物語は、協和大学理学部准教授熊沢勇一が、元研究室のボス小沼を訪ねるところから始まる。熊沢は「三ツ矢暸司の研究ノート」を小沼に見せ、一緒に検討してもらえるように頼む。

三ツ谷暸司は数学の天才で「数覚」を備えた学生だった。高校までは同じものを見てくれる友達はおらず、大学へ入学して初めて同じ目線でものを語り、考え、協力して研究していくという経験を積んでいく。初めて居場所ができたように感じる。
しかし……

 

 

「見える」人は「見える」のだ。だからそれを理屈で説明することは難しい。これはその通り。
村上春樹の「風の歌を聴け」で彼女が「パスツールには科学的直感力があった。普通はAならばB,BならばC、よってAならばCのところ、パスツールにはAならばCというだけで、しかしそれが正しかったのは後の研究が証明した」というようなことを言うのだが、そういうのは実際にあるのだ。

暸司が高校時代まで居場所が無かったこと、初めて居場所、いてもいい場所ができたこと、しかし時間が経ち人々は去っていってしまったこと、正しいと思っている研究の穴をつかれ必死で取り憑かれたように研究をしたこと、結局他の国の人に先を越されてしまったこと。

しかしアル中になるというのはやや安易という気がした。

この小説の良いところの一つが、非常にドライなところだと言えるだろう。アル中になった暸司の苦しさも、描かれてはいるが、読者がつよく共感して深く傷つくというほどではない。熊沢や佐奈、先生たちの罪悪感も描かれて入るが、読者が強く共感して以下略。
御涙頂戴では無いのだ。しかし気づいたらとても泣いている、とても。

タイトルは読めば分かる。

わたしには暸司の寂しさが分かるなあと思った。ひとりぼっちだったこと、青ざめたこと、ひとりぼっちに戻っていくこと。
でも他に居場所があれば、きっと大丈夫だったのにね。わたしは暸司のために泣くんだよ。

 

おわり。