小鳩常悟朗は高校一年生。同じく高校一年生の小山内さんとは互恵関係にある。二人は現状に満足して何かを深く追わない執着しない「小市民」であろうとしており、そのための言い訳としてお互いを使おうという取り決めをしている。
しかしそんな二人の前に、高校入学早々謎が舞い込む。同学年の吉口さんのポシェットが失くなったというのだ。小市民であろうとしている小鳩はしかし、その謎を……
<ネタバレあり>
ポシェット、絵画、ココア、詐欺の謎を次々と解いていく小鳩。学園もの&中学生くらいの子向けなので凄惨な殺人などは起こらないが、一つ一つの謎をバッサリと解いていく様はカッコイイ。
しかし、小鳩は「小市民」であろうと心に決めているので、この行いはその決意に反するものだ。心では小市民でありたいと思う、人から浮かない、嫌われない存在でいたいと思うのに、ほとんど本能で謎を解き始めてしまう。
小鳩はかつて「知恵働き」をして、いろいろな人が考えて解決できなかった謎を解いてきた。しかしその度に感謝されるわけではない。むしろ迷惑がられることも多い。出る杭は打たれる。
「こちとら幼稚園の頃から、人様に先んじて真相を見抜いてきたんだ」と小鳩は言う。しかしそれらを口にすると人からは感謝されるどころか嫌な顔をされることも多かった。そして「おまえの言い方が悪い、気配りが足りない」と言われてきた。
これ個人的に超共感だった。
わたしも子供の頃はそうだった。真実だから口にしていいと思っていたし、真実だから強く言ってもいいと思って口にしてたら、ていうか甘えてたんだなって今なら思うけど、とにかく、人からは好かれない。だから何度も「何も言わない」と決めて、失敗して、また決めて、と。
まあそんな話はともかく、小鳩くんは葛藤しながら謎を解き続ける。いちごタルトを乗せた自転車の盗難事件がこんな結末に結びつくとは思わなかった。凄惨な殺人が起こらないこの小説で唯一の大きな事件。小山内さんの復讐により事件は幕を閉じる。
そう、小山内さんにも隠している本性がある。それは、「自分に危害を加える相手を完膚なきまでに叩き伏せるとき、一番楽しそう」というものだ。小山内さんは、ものすごく楽しみにしていたいちごタルトを食べられなかったこと、自転車を盗まれそのせいで2回も生徒会室に呼び出されたことなどに激昂しており、小市民であることを忘れて、復讐の鬼になる。
面白かった。良作。小さな謎から始まっていくので、ミステリの入門としても読める(ミステリ知らんけど)。
繰り返しになるけど、小鳩くんと共感する部分があるので、なんとなく知恵働きをする生き生きとした小鳩くんを応援したいという気持ちがある。物語の中でくらい、賢い子がそれを遺憾なく発揮して輝いてほしい……って二人は結局物語の最後で「小市民」でいられなかったことについて悶々とするわけだが。
夏、秋、冬と小市民シリーズは続くので、楽しく読んでいきたい。
