【読書感想】秋季限定栗きんとん事件上・下 / 米澤穂信

「春気限定いちごタルト事件」「夏季限定トロピカルパフェ事件」に次ぐ小市民シリーズ第三弾。

中学まで、知恵を働かせすぎて人を出し抜いて真相を見抜き、迷惑がられてしまうことが多かった小鳩常悟朗と、復讐に楽しみを見出しやはり人とトラブルを抱えてしまっていた小山内ゆきは、二人で、毒にも薬にもならない「小市民」として埋没しようと約束し、そのためにお互いを利用し合うことで納得し合っている仲だった。前作夏季限定トロピカルパフェ事件のラストで二人は袂を分かっていた。

二人は別れ、小鳩くんは仲丸十希子、小山内さんは新聞部の瓜野とそれぞれほぼ勢いで付き合うこととなる。二人とも付き合いは順調であるなか、新聞部の瓜野はクラスメイトの氷谷に手助けをもらいながら地元で起こる放火犯を追っていて……

 

<ネタバレあり>

仲丸さんと付き合っている小鳩くん、瓜野と付き合っている小山内さんは、二人とも物足りないんだろうなって感じがしていた。

しかし、小市民であることを全否定された小鳩くんがちょっと面白かった。人になじみ、うかず、筒がなく生きていくために小市民になっているのに、それを全否定されたって。

そして瓜野を完膚なきまでに叩き潰した小山内さん。鬼畜だぜ……あえて自分が犯人であるかのようにミスリードを誘って告発させ、その論の稚拙さを暴き叩き潰す。その理由が「キスしようとしたから」というのだから、なんかいいな。

犯人は氷谷だっていうのは、かなり序盤から分かっていたけれど、一瞬「あれ小山内さんサイコパス説あり?」って思ってしまった。まあ、レシートを挟んだ本を忘れていったあたり、「自分を犯人と思わせようとしている」のがありありで、これどう落とすんだろうとハラハラしながら読んだ。

そして最終的に、付き合うようになる小鳩くんと小山内さん。高校の間と言っているけれどこの二人の性格の悪さは他の誰にも付き合えるものではないので、一生付き合っていくしかないだろう笑

相手の性格が悪いことを知っていて、その悪さを信じて面白がって付き合うっていうのすごくいいよな。わたしの夫も、わたしの性格がものすごい悪いことをしっってて付き合ってくれて、結婚までしてくれたけどなんでだろうってときどき思う笑夫は善良で誠実で自分勝手でちょっと冷たいが、その自分勝手さがわたしも好きだから似たもの同士だ。だから気が合うんだろう、と、小鳩くんと小山内さんの二人に自分たちを重ねたりもして……

本作「秋季限定栗きんとん事件」から4年ぶり?に刊行された「冬季限定ボンボンショコラ事件」も読もうと思われるが、ちょっと今読む本が溜まっているのでまた今度に。余韻も少し楽しみたい。この小市民シリーズが終わってしまうのが、とても寂しいので、ゆっくりしてから「冬季限定」を読もうと思う。

 

 

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mah_ (@nagainagaiinu.bsky.social) 2024-10-08T04:01:57.848Z

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