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【読書感想】月まで三キロ / 伊与原新

「月まで三キロ」「星六花」「アンモナイトの探し方」「天王寺ハイエイタス」「エイリアンの食堂」「山を刻む」「特別掌編 新参者の富士」の8作からなる短編集。

「月まで三キロ」では、浜松の有名な鰻屋で鰻を一口食べ急に吐き気を催し退店した主人公は、回送のタクシーに半ば無理やり乗る。そこで、富士山鳴沢村へ行きたいと告げ、樹海について問答して……

「星六花」では、来年40歳を迎える主人公が大学時代の友人から誘われて2対2の食事会に参加する。二人の男性のうちの一人は気象庁に勤める自称起床オタクの奥平。その帰り道、主人公は奥平から傘を借りる。

アンモナイトの探し方」では、中学受験のための塾へ行こうとすると腹痛など身体の症状が出てしまい夏期講習に行けなかった朋樹が、母方の祖父母の住む夕張へと気分転換に出されている。かつてアンモナイトの町と呼ばれていた地で朋樹はいまだにアンモナイトの採掘をしている戸川に話しかける。

天王寺ハイエイタス」では、「笹野家の長男は突然変異ばっかりや」と父が言う。父の兄、哲おっさんはミュージシャンだったが今はプータローで父に金をせびっている。健の兄は兄弟で博士号を取り、今では研究職についている。なのでかまぼこ屋は代々次男の仕事となった。

「エイリアンの食堂」では、若くして妻を亡くした謙介が小さな鈴花の面倒を見ながら定食屋を営んでいる。そんなお店に月から金まで毎日来て、曜日ごとに固定のメニューしか頼まない女性客がいる。鈴花はその女性客bのことを「プレアデス星人」だと思い込んでいる。

「山を刻む」では、主人公がある日、書き置きを残して山登りに出る。元々山岳写真かになりたかったくらい山は好きで、子育てがひと段落して義父を看取り、また山に登り写真を撮り始めた。そこで、果然の剣空車とその弟子が火山の石を取りに来ている現場に出会い、火山の話などを聞きつつ……

「特別賞編 新参者の富士」では、瑞穂のマイペースな友人美希と富士山の6号目までトレッキングしにやってくる。前の職場でストレスなどで調子を崩し睡眠障害や軽いうつ病を患って退職していた瑞穂に、唯一離れないでいてくれた友達だ。「山頂」とは。

 

<全体的な感想>

どの短編にも謎があって、それに科学的知識が作用して深い共感と温かさがある。地学の知識がキーとなる小説は読んだことがないけど、とてもよかった。でもこのパターンで数作だされても、飽きるかもしれない。

 

<ネタバレあり>

「月まで三キロ」はかなしかった。地学の知識がこんなに物語に絡んでくる小説初めて読んだ。うるさくなるどころか、すっと胸に入ってくる。とてもよかった。

「星六花」は、主人公の行動力の高さと恋愛力の低さに笑った。奥平さんくらい気象好きだったら、毎日が楽しいだろうなあと思った。最後に二人に友情が芽生えてる感じで結構グッと来た。

アンモナイトの探し方」は、両親が離婚し朋樹は母親と豊洲に二人で暮らしているが、通いたい鎌倉の学校が学区外となってしまい、いろいろと行き詰まっている。
12歳って色々わかるから、親の離婚とかで色々宙ぶらりんになるのつらい。そこに戸川さんが現れて、アンモナイトや化石の話を聞き、やるせなさを岩にぶつける。アンモナイトが見つかったらきっと!っていう祈りを捧げたい。

天王寺ハイエイタス」は、哲おっさんがギターを打って学費に使わせてくれたとかいい話と思いつつ、弟である父から金をせびってる時点でダメ男なので真価はわからない。悪い奴がいいことしたら理論にしか見えない笑
けど兄の世界の見方は良かった。てか兄は哲おっさんに頭上がらなくて当然だよな。

「エイリアンの食堂」は、宇宙めちゃくちゃロマンがあってエモい!って素直に思った。鈴花はきっと物理学の道に進むに違いない。

「山を刻む」は、どんな謎なんだろうと思いつつ読んでたら、山小屋買うんかい!!と度肝を抜かれた。火山研究者の二人のやりとりを見て、学生から話を聞いて、自分ももっと山の話を子供達にすればよかった、生き様を見せてやれば良かったという気持ちは理解でき、それが、え、え、や、山小屋????って感じだった笑

「特別賞編 新参者の富士」は、美希がひたすらいいやつだった。わがまま系いいやつね、一番気を使わない奴。こんな友達ほすぃなあ……。