猫になりたい無職の休日

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市谷の杜 本と活字館「ギャビー・ハザン デザインのアトリエ 活版印刷」

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目次

序文 ラーメンをすすって

イーストトーキョーの片隅、蛮族の地と誰が呼んだか上野徒歩15分圏内。そんな絶妙な立地に起居することのメリットは、東京メトロ銀座線、都営浅草線東武線、都営大江戸線、JR各線の駅に徒歩でアクセスできることである。つまり、どれかに乗れば割とどこへでも行けるのである。

ということでわれわれは、都営大江戸線に乗って牛込神楽坂を目指す。
前に、腹ごしらえである。

蔵前に狙っていた蕎麦屋があったのだがなんと店主通院による臨時休業。途方に暮れ蔵前駅方面に歩くが驚くほど何もない。いやあるのだが、ダイエッツ中のわたしが食べられそうなものが何もない。とんかつ、スリランカ料理、フィッシュ&チップス。
ふと目に入ったラーメン屋、麺屋上々。しかしわたしはダイエッツ。しかし有名店に今なら並ばず入れる。しかしわたしはダイエッツ。しかし今なら……そうしたしかしの応酬を心の中で繰り返し、気づけば暖簾を潜っていた。

鴨醤油ラーメンを頼む。

スープを一口口に含む。広がる醤油と鴨の味。うまい。わたしのオールタイムベストラーメンのナンバーワンは田原町の麺みつヰか綱島の笑歩が競い合っているが、そこに割り込めるスープの味。気がつけば「やばいみつヰより好きかも」とか口にしていた。

はあ。満足。

いや満足じゃねーんだよ。大江戸線に乗れ。はい。乗った。はい。牛込神楽坂で降りる。目指すは市谷の杜 本と活字館だ。曇っていてまだ過ごしやすい気温だ。

市谷の杜 本と活字館

閑静な場所にある。

建物がとてもかっこいい。

この施設は、もともとこの地にあった大日本印刷市谷工場「時計台」を修復・復元し、建物を建築当初の姿へと復元し、「本と活字館」としてオープンしたものだ。

入場は無料。いくらでも見放題である。

展示は順をおっていくと活版印刷がよくわかるようになっている。
そもそも活版印刷というのは活字を用いて大量印刷をする印刷方法のことを指すのだが、活字を始めて作ったのは中国だと言われている。そして中国で活字があることを知らなかったはずのヨーロッパでも活字が作られる。面白い。人間が知恵を絞って効率的になるように物事を進めようとすると、どこにいても互いに知らなくても同じ結論になるのだ。おもしろすぎる。

そんなわけで活字を作ったら、あとは大量印刷の時代である。中国や日本では漢字を多用していたこと(無限)、中国では崩字などもあったことから大量印刷にはなかなか結び付かず、従来の木版印刷が主流であった。

そんな中、1445年ごろ、ドイツでグーテンベルク活版印刷を始めたとされる。

活版印刷にはいくつかの工程がある。

 作字:職人が字を掘る

 鋳造:作字した活字を大量生産

 文選:印刷したい文章に合わせて活字を選ぶ

 植字:活字を版にする

 印刷:作った版を用いて大量に印刷していく

 製本:発行したい形体にあわせて製本していく。糸かがりとかホッチキスとかのり

という風に文字にしたら「そりゃそやろな」という工程なのだが、すべての工程がすさまじい職人技に支えられている。

たとえば「文選」は、活字を選ぶだけなのだが、凄まじいスピードで行われる。この施設では職人のスピードに合わせて植字をしてみる(画面をタッチするだけだけど)体験コーナーがあるが、とてもじゃないけれど無理。ジョバンニはよくもこんな仕事を。
そもそも老眼だったらこの仕事無理。

それで「そうだったんだ!」って思ったのが、こうした植字をして作った版を「ゲラ」というらしい。いまでも印刷する前にゲラのチェックというのがあると思うけれど、語源を知れてちょっと嬉しかった。

また、こんなものもあった。

夏目漱石の「坊ちゃん」冒頭の複製原稿だ。こんなの見る機会ないから楽しいいい。

今は原稿用紙に手書きで書く人あまりいないだろうから、こうしたものがますます貴重な資料になっていくのだろうな。ラランドのニシダはノートに横書きでぶわーーーーって書くらしいけど、編集者文字起こしするの大変だろうな……。

そんなこんなで職人技を体験したりと楽しい展示なのだけれど、展示スペースの奥に、復元した植字スペースがあって、

ちょっと伝わりにくいのだが、こんなスペースでものすごい速さで植字していく。そりゃ誤植もあるよ。誤植には寛容でありたいと思った。まあ今は誤植は変換間違いがほとんどだろうけれど。

ギャビー・ハザン デザインのアトリエ 活版印刷

2階に上がると企画展が催されている。そもそもこの展示を見にきたのだ。閑古鳥ぽよぽよ。なんでだ。みんなもっといろんなことに興味を持て。

こじんまりしすぎている。いやこの施設そのものがこじんまりしているので仕方ない。しかしそれにしても閑古鳥p(2回目なので割愛)。

ギャビー・ハザンはフランスを中心に活動するアーティスト。この展示では、そのギャビー・ハザンの絵本「Le Typographe」が紹介される。この絵本では、活版印刷の仕組みが説明される。

活版印刷は、字を作り、組み、印刷する。ただそれだけのことなのに奥が深い。先ほども書いたが、すべての工程に職人の技が必要となる。

この展示では、下絵から色をつけていく過程が説明される。人がまったくいないのでゆっくりとその工程を想像しながら鑑賞することができる。

この展示を見ていて、アルファベットやそれに類する文字を使う言語における活版印刷の難易度と、無限にも思える漢字を用いる言語における活版印刷の難易度の差に愕然とする。また、ハングルはどうだったんだろうと思った。パッチムとか。全パターン網羅していたんだろうか。気になる。気になるのに調べないのが大人の悪いところであるが、気になるのに調べないことで「どうしてだろう?」という好奇心を胸のうちに置いておくままにできるのもまた大人の余裕なのである。

と、いうことで、

常設展示も含め、企画展まで無料で見られるというのはすごい。さすが大日本印刷かっせいっでるぅーとふざけるのではなく、一種危機感なのかもしれない。活版印刷がなくなってしまうことへの。歴史を繋ぐ。それも企業の社会的責任と考えてのことだろう。頭がさがる。

すごく楽しい。すごく知的好奇心がくすぐられる。すごくジョバンニが愛しくなる。

おすすめの場所です。レッツゴー。

 

わたくしからは、以上です。

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