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【読書感想】夜明けのすべて / 瀬尾まいこ

 

二人の視点が交互に記される形の小説。一人は、生理前にイライラが抑えきれず日常生活、会社での仕事、人間関係にすら影響を及ぼしてしまうほど重たいPMSの症状に苦しむ藤沢美紗、もう一人はバリバリに友達も多くて仕事も順調で彼女もいて順風満帆だった最中にパニック障害を発症し、電車に乗れず他人と協働して仕事をすることが難しくなってしまった山添。

あるとき美紗はPMSの症状でイライラを抑えることができず、山添に理不尽に当たり散らしてしまう。またあるとき、山添は会社でパニック発作を起こしてしまい、美紗に助けてもらう。

まったく異なる病気だが、社会に適応していくことに苦労する二人だが……

 

<感想>

昨日映画を見て、「ああーいい映画だったなー。原作全然覚えてないから再読しよう」と思い、早速今日再読した。

うん。まったく違った。でも映画はよかったことは一応言っておく。

山添が最初心を閉ざしていた時に、「わたしもPMSなんだ」」と告白し「お互いに無理せず頑張ろう」と話す美紗に、「PMSパニック障害って、しんどさも苦しさもそれに伴うものもあまりに違うのになと、ふと思っただけです」と返す。それに対して美紗が機転を効かせておどけたように「そっか。病気にもランクがあったんだね。PMSはまだまだってとこかな」と言う。

このやりとり結構象徴的と思う。
孤独の中にいる山添には、相手を慮ることがまずできなくなっているし、自分だけが世界で一番辛いみたいに思ってないにしても心のどこかにそういう気持ちはあるはずで、それってどんな病気の人でもそうじゃない?と思った。

たとえばわたしは頭のバグと身体のバグを抱えてるが、頭のバグに関しては10年以上入退院を繰り返すほどの状態だったから、同じバグの人の弱音を見かけても「一緒にすんな」と思ったし違うバグの人を見かければ「働けるんだから全然ましじゃねーか」と思ったりした。身体のバグもそう。

で、美紗がそれをどんどんときほぐしていく。
もちろん、山添は元々優しい気の利く人間だったのだろう。だからこそ美紗のPMSの兆候(首の後ろの筋肉がこわばっているなど)を察して怒りを減衰させてあげたりすることができた。
山添は、その本来の健やかなあり方を空気を読まない美紗、いわば「同士」とのやりとりを通じて取り戻していく。

いろんな気持ちがあったはずだ。もっと仕事を頑張りたい、もっと人と親密になりたい、もっと運動したい、もっともっと。
そうしたことを、諦めなくてもいい。

もちろん、症状のことを考えたら諦めなければならないことはたくさんある。でも、形を変えて、やり方を変えて、見方を変えていけば、できることはまだたくさん転がっている。

ダブル主人公だけれど、実質主人公は山添ひとりで、その山添が少しずつ自分を取り戻していく様子を見ることで、自分もまだまだやりたいことやれることが絶対あるし、自分を諦めたくないと思った。

泣かなかったけど、心の底からよかったねって思えた。それは自分にそう思うことと同じなのだ。

やるぞー(何を)。