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【読書感想】もうちょっと読んでいたかった「ババヤガの夜 / 王谷晶」

 

ある夜新道依子はヤクザにさらわれる。繁華街で酔っ払いを相手に大立ち回りをしているところを見られ、その腕を買われて暴力的にヤクザである内樹の邸宅へ連れてこられる。その過程でもヤクザを相手に暴力的に立ち回るが、自分ではない他者へ対する脅しを受けて仕方なく従うしかなくなった。

依子は内樹の愛娘である短大性の尚子の護衛(送り迎え等)をするという役割を請け負うこととなった。毎日顔を合わせているうちに二人は……

 

<感想>

暴力の申し子依子とヤクザのお嬢様である尚子が、お互い元々はイヤイヤながらも義務的に顔を合わせているうちにだんだん打ち解けてきて同情しあい、感情を分け合い始める。というのはありがちなストーリーといえばストーリーだ。

依子は暴力で周りを圧倒するのだが思いのほか順応性が高い。柳にも一目置かれ、俺の女になっておけとか、一緒に逃げるかとか言われるくらい、暴力の世界では魅力的でもあるのだ。

案外共感性も高いのだ。普通圧倒的な暴力をふるう人間というのは相手の痛みがわからないというように描かれるが、依子はじいちゃんの圧倒的な暴力で叩きのめされ叩きのめされ叩きのめされてきたから(普段は優しい)、相手がどうやればどう痛いか、どう苦しいか、どんな気持ちになるかがよくわかっている。その依子に感情移入して読むと、読者は相手の痛みを直に感じることができる。じいちゃんに暴力で暴力を教えてもらったことを読者が知るのは物語の中盤だが、なのになぜか最初からその設定が生きている。いやーよいですね。

けれど、暴力描写って綺麗なのだ。どうしてそう感じるのかわからない。コインロッカー・ベイビーズとか読んだ時「真っ白で美しい」とすら思った。どうしてなのだろう?やはり生物の根源は暴力があるのだろうか?人間というのは理性ではなく暴力で支配されるべきものだろうかってそんなのやだ!

ただ暴力シーンがごちゃごちゃしてなくていっそ綺麗だったということ。
でもそれほどグロくなかったので、暴力を目的に読むと拍子抜けするかもしれない。

さて、そして大どんでん返し。
あってる?どんでん返しで。叙述トリックってやつもどんでん返しであってる?いや叙述トリックというのもがどういうものかもあんまりわかってないんだけど。

「え!???え!???まじで?え?それあり?」ってなってページを戻ってどんな書かれ方しているか確認してしまった。
でも次に「あーそうかー二人を救うにはこれしかないもんなー必然だよなー」となった。単に小説を盛り上げる、ミステリとして完成度を高めるための演出ではなく、物語の終着先としての適切で最良のストーリーだと思った。

しかし最後はそれかー。
これ、尚子じゃなく依子を生き残したのどうしてなんだろう。逆もあり得たと思う。依子が倒れ、尚子が寄り添って終わるとか。

頼子に最後まで仕事を全うさせてあげたかったのかな?

カートについてはいろいろあるが、古い県営団地ってスーパーが入ってたり、あるいはスーパーから勝手に持って帰ってきてしまったカートがあったりするから、リアルでいいなと思った。

これから依子はどうするんだろう。暴力に震え上がるほどの喜びを思い出してしまい、守るべき尚子を失い、また朴訥な人間として工場勤めなんかできるんだろうか。

などなどいろいろ思いを馳せてしまった。
分量的にもう少しあるともっと説明できてよかったかもなあとも思う。結構唐突なラストだったから。でもそれくらいがよかったのかなー。うーん。そこも含めていろいろ考えが及ぶ作品だった。

 

わたくしからは、以上です。