どうやって読書感想をブログに載せたらいいんだろうと考えあぐねている。うーぬ。とりあえず今週は「今週の読書」として載せるが、来週どうするかはまだ未定。
武士道シックスティーン / 誉田哲也
香織は3歳から剣道を始め、中学では全国大会準優勝という腕を持つ。準優勝で終わることが嫌で優勝を確信して臨んだ横浜市民大会。しかし4回戦で無名の選手、早苗に負けてしまう。高校へはスポーツ推薦で行くことにしていたが、声のかかっていた高校のうち、自分を負かした早苗のいる東松学園へ進学することにした。
しかしいざ進学して再開すると、早苗の闘争心のかけたところに苛立ちを覚えた。また、自分を任した早苗が、強さをなかなか見せないことにも怒りを感じた。自分を負かした早苗が、同じ部の他の選手にあっさり負けるのも気に食わなかった。
そうして二人は……
<ネタバレあり>
剣道はやってみたいと思ったこともないが、こうして小説を読むとすごく面白いスポーツのようにも思う。
この物語はわかりやすい成長の物語で、一匹狼の香織が、自分の最大の武器である剣道で壁にぶつかり、悩み、周りの人の働きかけでそれを克服し、自他の区別をつけ、自我の扱い方を知り、またみんなの元に戻り、いろいろあるけど頑張って行く、という話。
1年生前半の香織は割と自己中で最低めなのに強いから許されていた。のに勝手に部活から離れたくせに試合では負け、全国大会出場を逃す原因を作ってしまい、なけなしの信頼も失ってしまう。それでも先輩たちは優しく受け入れてくれたし、顧問も早苗も心配している。しかしそれが響かない時間が長く続く。ある日の父との喧嘩のあと兄に諭されたこと、父に竹刀の手入れをしてもらいながら聞かされた教え。いつでも受け入れてくれる早苗。背中で語ってくれた村松先輩。
その一方で、早苗の成長物語でもある。早苗が父の失脚によって嫌いになってしまった「勝ち負け」という概念。そこを、他ならぬ父の再登場とその後の家族への展開などによって克服して行く物語でもある。
二人が共通して気づいた(気付かされた)事実は「勝ち負けなんかより、そのことが好きかどうかが大事だ」ということ。
そう思うと、自分の青春時代には、彼女たちにとっての剣道のような存在があっただろうかとかなしくなる。つまり無かったのだ。
だけど今は少しある。ゲームや読書が好きだ。ブランクが開くこともあるけど、始めれば時間を忘れてのめり込むくらいには好きだ。ゲームには勝ち負けがあるが、負けても悔しいけど嫌じゃない。楽しい。読書にはそもそも勝ち負けがない。ただ楽しい一辺倒だ。 そうした好きなものが今はある。
わかりやすい成長物語で、悪意のある人が出てこない、安心して読めるスポーツ小説。でも軟いわけではない。小さな描写、さまざまな気付き、剣道の試合の表現。多くの要素が素晴らしく、読後感も爽やかで、未来は明るいなこんな未来が今の現実の高校生たちの目の前にも広がっていたらいいなと、そんなふうに思った。
われはロボット / アイザック・アシモフ
ロボット心理学者キャルヴィンが語る、ロボットの創世記から現代(小説内の現代)に至るまでのロボットにまつわるさまざまな話が章立てになっている。全体としては、キャルヴィンに対するインタビューという形式の上で、キャルヴィンがロボットについて語る、というてい。
さまざまなロボットの行いについて回る「ロボット工学三原則」。
第一条ロボットは人間に危害を与えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。第二条ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、そのかぎりではない。第三条ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない。
この原則にのっとって課題を解決して行く。逆を言えばこの原則にのっとってしか課題を解決して行くことはできない。
<ネタバレあり>
手塚治虫の火の鳥復活編で出てくるロビタが本作ロビィのオマージュであると分かり一人で胸が熱くなっていた。
それはさておき。
スーザン・キャルヴィンはロボットが本当に好きなんだなあと思った。その一方でNS型を63台全部処分しろとか結構容赦のないことを言うのは面白かった。
ロボットと人間はどう共存していくのがよいのだろう。
本作で出てくるハイエンド・ロボットの作り方は、まず人間が作りうる人間より賢い人工知能を作る。その人工知能にさらに賢い人工知能を作らせる。そいつにさらに賢い人工知能を作らせる……を繰り返して作って行くからもう人間には何がどうなっているのかわからない。
chatGPTが出てきて、AIに対する世界の意識は一気に変わった。AIはよき相談相手にもなり、よき道標にもなり、よき教師にもなる。このAIを搭載する自律型の自立型のロボットは現代の技術ではまだ作り出すことはできないようだけれど、いずれ克服する気がする。
というか、ロボットに限らず、AIにも三原則を守ってほしいよなーとか思うよね。たとえば火の鳥未来編ではマザーコンピュータ同士が喧嘩して「戦争よ!」「望むところよ」で人類はコンピュータに逆らうことができなくて原子爆弾で滅びるわけなんだけど、それをどう防ぐのかって難しい。
たとえば今の政治家がAIに「どうしましょうね」とか尋ねてAIが「いやーそろそろ戦争も視野に入れた方がいいかもですね」とか言ってたらどうすんだろう。とかってこと。
しかしでも夢がある分野よね、ロボット。介護にも絶対必要になってくるし(装着型の介護マシンもできたよね)、製造業にはなくてはならないものだし、宇宙開発にも絶対必要だし。ただ意思を与えるのかどうかという難しい判断がある。意思を与えたとして、その責任は誰がとるのかとか。難しい。
などいろいろ考えたけれどこの小説は本当に面白かった。これを70年前に読んだ読者は今生きていたら、どんな思い出この世界を眺めてるんだろう。やっぱり「アシモフはすごかったな」と思うんだろうか。