ちょっとした感想
「春気限定いちごタルト事件」「夏季限定トロピカルパフェ事件」に次ぐ小市民シリーズ第三弾。 中学まで、知恵を働かせすぎて人を出し抜いて真相を見抜き、迷惑がられてしまうことが多かった小鳩常悟朗と、復讐に楽しみを見出しやはり人とトラブルを抱えてし…
Xで「#名刺代わりの小説10選」というハッシュタグがあり、自分も久々にポストしてみた。その作品が次の10作。 再掲す好き好き大好き超愛してる。/舞城風の歌を聴け/春樹恋に至る病/斜線堂恋文の技術/森見横浜駅SF/柞刈湯葉カラスの親指/道尾パラークシの記憶…
「春気限定いちごタルト事件」に続く、小市民シリーズ第二作。 中学まで、知恵を働かせすぎて人を出し抜いて真相を見抜き、迷惑がられてしまうことが多かった小鳩常悟朗と、復讐に楽しみを見出しやはり人とトラブルを抱えてしまっていた小山内ゆきは、二人で…
「ある女王の死」「妹の夫」「雌雄の七色」「ワイズガイによろしく」「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」の五作からなる短編集。初出は全部小説推理。 「ある女王の死」は、最恐の高利貸し榛遵葉の死体の傍に置いてあるチェス盤から物語が展開す…
5人の著者が「脱出」をテーマに書いたミステリー小説集。 作品は、次の5作。阿津川辰海「屋上からの脱出」、織守きょうや「名とりの森」、斜線堂有紀「鳥の密室」、空木春宵「罪喰の巫女」、井上真偽「サマリア人の血潮」 読んでいて、わたしの中で「ミステ…
八雲の母は、身体が徐々に塩に変わっていく「塩化病」を患っている。小学3年生の八雲は他人の痛みを自分の痛みとして感じてしまう幻肢痛のアレンジ版みたいな特性があり、母の感じる痛みやあった場所に無い腕のその空白を痛みとして感じてしまう。ある日その…
小鳩常悟朗は高校一年生。同じく高校一年生の小山内さんとは互恵関係にある。二人は現状に満足して何かを深く追わない執着しない「小市民」であろうとしており、そのための言い訳としてお互いを使おうという取り決めをしている。 しかしそんな二人の前に、高…
マイクル・コーニィ「ハローサマー、グッドバイ」の続編。だが、前作を読んでいなくてもまったく問題なく楽しく読める。ただ、前作のラストのネタバラシがあるので、気になる方は「ハローサマー、グッドバイ」から読んでみた方が良い。 さて、本作。 17歳の…
30歳の多田は古本屋の店主。いつものように店に出ていると、女子高生に万引きされる。捕まえて名前を確認し、なぜそんなことをしたのかと問うとその女子高生岬は「名前を覚えてほしかった「同じ本を読みたかった」というようなことを話し、「好きです、結婚…
子規冴昼は霊能者……のように振る舞う。仕掛け人はサークルの後輩だったマネージャーの呉塚要。人々の心を掴んでやまない子規という存在は、詐欺師である要によって見出された唯一無二の才能ということだ。二人は手を組んで、子規は霊能者を装い、要の指示に…
人気小説家遥川悠真が失踪した。失踪事件受けて遥川悠真の自宅を刑事が捜索していると、そのウォークインクローゼットを見て驚く。そこは、赤いランドセル、クローゼットに掛かったブレザー、など少女が過ごし育っていった様子が見て取れる一角となっていた…
*この作品は、「ナゾノベル」という小中学生向けのシリーズの一作。漢字にルビがふってあったり、小中学生が知らないような単語(東西冷戦、素数、など)は注釈がついていて理解できるようになっている。 私立塀戸中学に通うごく普通の中学生和登尊の前に現…
理不尽に集められたほうかごがかり。 1巻と2巻の感想は↓↓ nagainagaiinu.hatenablog.jp nagainagaiinu.hatenablog.jp ついに、二人になってしまった啓と菊。啓は惺がしようとしていたことを全て引き受けると、また、すべての無名不思議の担当になると太郎さ…
理不尽に集められた七人の「ほうかごがかり」第2巻は第五話から第七話まで。 第1巻の感想などはこちら。 nagainagaiinu.hatenablog.jp 第2巻はしんどかった。というかこの小説しんどい。推しがどんどん……ふえぇ。 第五話はイルマ、第七話は留希、惺……。ええ…
ある日、目立たない小学生である啓は黒板に「ほうかごがかり 二森啓」と書かれていることに気づく。誰かのイタズラだろうと思い帰宅するが、夜中、不快な音に目覚めさせられる。隣の部屋からその音はしていて、寝ている母親が起きて騒いでいないのが不自然に…
野生時代新人賞を受賞した岩井圭也のデビュー作。短めの13章からなる。各章で視点人物と時系列が変わるので、そういうのが苦手な人は一定数いると思われるが、まあよき物語なので読んでみてほしい。 物語は、協和大学理学部准教授熊沢勇一が、元研究室のボス…
「ミニカーを捨てよ、春を呪え」「星が人を愛すことなかれ」「枯れ木の花は燃えるか」「星の一生」の4作からなる短編集。 レーベルがジャンプジェイブックスなのもあって、全体として、平易でキャッチーな文章。「回樹」や「本の背骨が最後に残る」をイメー…
先日Netflixで話題の「地面師」というドラマを見た。流行に乗ったのである。大変面白かった(語彙力)。 www.youtube.com 主人公辻本拓海(綾野剛)が地面師になった理由は割と序盤で分かったのだけれども、そうだから苦しかったし、「そうじゃないだろ」と…
岡部杏里さんのファースト作品集。見開きで四首、計百首が掲載されている。 めちゃくちゃよかった。 多くの単語をひらがなに開き、平易な言葉で誰にでもわかるように、しかし誰でも簡単に切り取れるわけではない感情を歌にしているという印象を受けた。 「ご…
2009年11月号から2013年5月号までの別冊文藝春秋に掲載されたミニエッセイ。毎回、「キュン」ときた場面についてイラストと少しの文章で綴ったもの。 最近読書をしていなかったので、復帰のために何か軽いものをと手に取った一冊。内容は無いよう。失礼……。…
最高だった……。 高校教師の作者による短歌連作とエッセイを収録した作品。青春の迷い人だった時代から始まり、高校教師となり奮闘する。これでいいのかとずっと自問自答しながら。 元小説家志望ということも関係があるのかは分からないけれど、物語を読んで…
穂村弘がいろんな短歌を紹介して読み解いてくれる本。「ガチャポン」というのは、何が出てくるかわからないワクワク感を表しているらしい。あまり誰の歌集を読もうかというのすらもわからない初心者にも優しい。とくに1900年代前半の短歌とか、どこから手を…
第二歌集。 元彼なのか、思いを明かさずにいた男友達なのか、何人かの男の子が出てきたように読んだのだけれど、あれは全部は同一人物じゃないと読んでいて(時系列で書いてあればだけど)、恋とかをしたことが遠い昔すぎて、そういう気持ちになったっけかと…
衝撃だった…… 短歌は基本的に書き手の一人称と思われることが多い。かつて新人賞で父の死をテーマにした連作があって、本当は父が生きていて死んだのは祖父だったっていう事実を、ベテランに激怒されたみたいなものも読んでいた。だから自分も、作者の一人称…
短歌の作り方をそもそも学ぼうという試み。過去にも読んだことのある入門書などを、今また読んでみようというのだ。 読んでみると忘れていることばかりで、なるほどなと思いながら読み進めた。でもわたしの短歌、もう全然ダメじゃん、とかなしくもなった。全…
一番最近の穂村弘の歌集。章ごとに時間軸が異なる。現在、子供時代、子供時代(冬)、子供時代(夏)思春期へのカウントダウン、昭和の終焉から21世紀へ、21世紀初頭のパラサイトシングル像、母の死、その後、その後、再び現在。 スカした感じがなくなったと…
塔短歌会主宰らしい。塔には入るか検討した。まあそれはいいや。ちょっと若い人or若い頃の短歌から離れた歌集も読もうかと思って手にした一冊。 お母さんの面倒を見て、看取るところが、自分の父ちゃんを看取ったときのことを思い出して泣きそうになった。 …
笹井宏之の第一歌集。重度の身体表現性障害の笹井宏之にとって、短歌とは希望だったのだろうなと思う。周りにあるあらゆるものが、それが美しいものであれ楽しいものであれ、すべて自分の身体に跳ね返ってきてしまう。何もかもが生きることの重しになる。絶…
この歌集は全然思っていたのと違っていた。想像の真逆で、重く、苦しい短歌が多かった。タイトルからしてサラリとしているのかと思ったのだけれど、いやでもこれタイトルも重いな、内容知ってから読むと。ザ・ノンフィクション見てるみたいだった。 ++++…
以前こんな記事を書いた。 nagainagaiinu.hatenablog.jp わたしの趣味の一つとして短歌を挙げたいのだが(願望形なのは下手すぎるから趣味と言っていいのか悩ましい)、自分が作る以外にも当然人の作った短歌を読むのも好きなのだ。そして、現存する歌人でも…