遠心分離機

文体の練習

2020年ごろの入院で読んだ本とそのときの感想たち(再読含む)

昔のブログに残ってたから、再投稿しておきます。
めちゃくちゃ量あります。

では以下。

働かないふたり(吉田覚) 

全巻一気読み。大変面白い。悪い人が一人も出てこなくて、ほのぼのした気分になれる。

が、こんなに登場人物は要らない。日常すぎて新しいエピソード作るのに新しい登場人物を出すしかないのだと思うけれど、ちょっとキャラが出過ぎ。で、キャラに頼りすぎ。晩年のちびまる子ちゃんと少し似てる、そういう意味では。

 でも好き。

 

天才はあきらめた(山里亮太) 

努力できる天才はやっぱりすごいなと思った。

南キャンは仲悪いとき、しずちゃんが山ちゃんを嫌ってるんだと思ってたけど、むしろ逆でびっくりした。仲直りして、しずちゃんが山ちゃんにもう一度M1でネタをやりたいと言ったエピソードが素敵。

自分も何か努力をしないとなあと思った。天才じゃないしね。

 

小説家という職業(森博嗣

小説を読むのも書くのも別に好きじゃなくてお金のために副業として始めたらしい。まじか。書いてあることはもっともなことが多かった。寺地さんみたいに30半ばから小説を書き始めてデビューして人気になった作家さんは、どんな気持ちで小説を書いているのか、知りたいと思った。

 

HaHa(押切蓮介 

 著者の母の若い頃の話。面白かったけど、再読はないかな。それにしても、昔の人は何もかもに一生懸命で覚悟が違うと思った。

 

失恋ショコラティエ水城せとな

どっちかというと話の展開とか好きじゃないのにときどき読みたくなっちゃう漫画。そこが力量なんだろうなと思う。

 

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬(若林正恭

第一回斎藤茂太賞受賞作。オードリーの若林の紀行文。

これすごく面白かった。賞側の売名かと思って読み始めたけど、全然そんなことなかった。文章も下手じゃないし表現力もあり、自分の内面を見続けることのできる人と知って、好きになった。 

 

ご本、出しときますね?(若林正恭

読書好きのオードリーの若林がゲストに作家を呼んでトークしてお勧め本を紹介する番組の書籍化。

コンビニ人間」読んだとき「ぶっとんでんな」と思った村田沙耶香が本人も本当にぶっとんでいてよかった。

 

藻屑蟹(赤松利一)

すごい。デビュー作(といっても64才)と重終えないくらい文章力と表現力がある。原発関連の話で、どこまでが本当でどこからがフィクションなのかは分からないけれど、なんか自分は平和ボケしてるなあと思った。

 

祐介・字慰(尾崎世界観) 

 

ロックグループ クリープハイプのボーカル、尾崎世界観の書いた小説。初期の村上龍にイメージと似ていて、場面がシャッターを切るようになんの説明もなく目まぐるしく進んでいくイメージ。非現実の中にきっと現実が描かれていると思った。

ラストはぶっとんでいた。

そのラストに出てくる少年のスピンオフにあたる「字慰」も狂ってた。多分褒め言葉。

 

ハチ公の最後の恋人吉本ばなな

大学一年のときに友達に誕生日でもらった本を再読。

離れてしまったマオとハチだけれど、マオが友人といながら、「ハチにもそんな時間があってちゃんと生きてるんだ」と気づいて嬉しくなるところが良かった。

女性の作家にうまく馴染めないのは、わたしが多分真ん中寄りの性質だからなんだと思う。なんだろう。かなしい。でもおもしろく読んだ。友だちがどんな気持ちでこの本をくれたのだろうと考えると、胸があたたかくなった。

 

りり、りら(水槽)

りり、りら

りり、りら

Amazon

詩集。言葉のセンスがすさまじい。

水槽くんの持つ綺麗な雰囲気は、まあ顔もかっこいいけど、生死を仕切るロープに上でバランスとってるみたいなところがあって、勝手にだけど神聖ささえあるよなと思ってる。

しかしわたしには素養がないので、きっと本当の価値は分かれてない気がする。まあでも水槽くん推しで、いまは違う名前で活動していて賞をとりまくってるみたいなのでこれからも、そのバランスを保ってて欲しいという自分勝手な気持ち。

 

僕の人生には事件が起きない(岩井勇気

ハライチ岩井のエッセイ。文章を読む習慣の無いらしい人のエッセイなのでもっと雑なのかと思って読んだけれど、よかったときのさくらももこ土屋賢二を彷彿とさせる文体やなんでもない日常に目を向けて、そこに自分の気持ちや想いを乗せて文章を書けるのがいいなと思った。
「 澤部と僕と」では、澤部への愛情を感じた。一瞬悪口なんだけど。

 

ボクたちはみんな大人になれなかった(燃え殻)

ツイッター文学らしい。読後感が良いのは、一人を除いてみんないい人たちだったからかな。登場人物が様々な個性の中で、それぞれに慈しみ合っていて、思ったより温かい気持ちにになる小説だった。

世界の人口は70億を超えて今日も増え続けてる。

ボクたちがあと50年生きるとして、人類一人一人に挨拶する時間も残っていない。僕たちが会えたことは奇跡だと思わない? 

 

さびしすぎてレズ風俗行きましたレポ(永田カビ)

 大変だねって感じ。

 

明るい夜に出かけて(佐藤多佳子

再生の物語。

登場人物が生き生きと描かれていてすごいよかった。主人公の語り口調だけでこの長さの小説を読ませられる技術がすごい。

それぞれの葛藤を、それぞれが共有しながら克服していくのがとてもよかった。

中でも佐古田の文化祭は一つのターニングポイントになっていて、主人公がここからぐっと成長していく(口調はぼやきだけど)のが見ていて嬉しい。一人が作ったものが連鎖してまた別の誰かが新しいものを作っていく。人と人との繋がりや関係みたいだなと思った。

舞台が金沢八景(元職場)なのでリアルに町をイメージできてなんか微妙な思い。そこの職場にいた3年間はすごく楽しかったけど、そこが躓きの原点も気もしていて。

 

世の中と足並みがそろわない(ふかわりょう) 

 

途中までしか読めなかった。いじけた超絶上から目線がダメだった。いじけた上から目線はオードリー若林やハライチ岩井も持っている要素だけれど、それを面白くする洞察力と表現力があった。この本にはそれは感じれなかった。「女は〜」とか「男は〜」とか出てきてもう読めなかった。わたしはフェミではないけれど、著者は感覚が古いんかなあと思った。

 

白河夜船(吉本ばなな

吉本ばななの何が苦手なのか分かった。文章が艶っぽすぎて性を感じさせるのが、性嫌悪の強いわたしには受け入れられないっぽい。だからキッチンは平気だったんだな。理解。

表題作は不倫。主人公の再生の物語。気怠いエロい感じがダメだった。

「夜と夜の恋人」は性の感じがまったくなくて面白く読めた。

「ある体験」はぶっ飛んでた、モラルが。

ばななはもういいかなー。

 

どうしても生きてる(朝井リョウ

 物語に引っ張られてぐいぐい読むタイプの小説ではないけれど、核心をついた作品たちだなと思った。ままならない人生の中で、どうしても生きてる。

 なんで不倫すんの!男はみんな不倫してんの?という心の叫びはさておき。

印象的だった文章を三つ。

涙も出ないような乾いた目に映る道を歩くしかない。どこに向かったって後ろめたさの残る歴史を歩み続ける以外に、この人生に選択肢はない。(流転)

心のままに泣いても喚いても叫んでも驚かない人がひとりでもいれば、人は、生きていけるのかもしれない。それが誰にとっても誰でもない存在としてしか向き合えない人であっても。(そんなの痛いに決まってる)

受け入れる、受け入れないを選べたわけじゃないんだよ、これまでもずっと。(籤)

 なんかそうなんだろうなと、思うんだよね。病気がひどくなってからは特に。どうしても生きてる。だから明日も生きていかなければならない。不本意な目にあっても、誰かを裏切ることになっても、それがもう何の意味もないような人生であっても。

 

何者(朝井リョウ

めちゃくちゃ面白かった。さすが直木賞。ぐいぐいと読んだ。細部の書き込みとか描写力がすごくて、文章上手いなとか当たり前のこと考えたりしてた。頭の中にスッと場面が思い浮かべることができる。

おそろしやおそろしや。裏垢っていうか、どんなに仲が良くても相手の弱みを少しでも見つけてやろうという気持ちが怖い。最後、喧嘩二発で終わるけど、心がキツかった。

就活はやったことある人はわかると思うけど、病む。人生全てを否定された気分になるし。

最後のシーンは拓人の面接で終わるのだけれど、面接後どうとかじゃなく、これからの拓人の人生にとって大きな変化があったことがわかり、少し良かった。

輪るピングドラムじゃないけど、「きっと何者にもなれないお前たち」であることを認めなければならないんだね。

 

ベランダは難攻不落のラ・フランス衿沢世衣子

雰囲気漫画。こういう漫画ってどこに需要があるんだろとか思うけど、わたしも南Q太とかunlimitedにあったら読むから一緒か。

 「ベランダ」という作品が良かった。一昨日読んだ朝井リョウの「どうしても生きてる」の中の「そんなの痛いに決まってる」と少し似ていて、人にはやっぱり匿名性のある、今の現実の自分と一切関係の無い場所や人に救われたりするんだよなあと思った。

 

僕の好きな人が、よく眠れますように(中村航

 近年稀に見る酷さだった。一ミリも面白くない。

もう不倫は許すとしても、作品の1/3くらいが、惚気。「好きです」「私の方が好き」みたいな場面が延々と続く。

不倫なら不倫でその葛藤を描けばいいのに、ノロケ。セカチューよりひどい。唯一木戸だけ良い。

著者が若いのかなと思ったけど。1969年生まれでこの作品は2008年に書かれているので39歳。まじか。高校生の文芸部みたいだった。

でもこの著者は芥川賞候補に二度選出されているので、わたしが単に合わなかっただけかも。

いやにしたってさ。

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(ブレイディみかこ) 

なんかよく見かけるからひょっとして課題図書なのかなと思って読んでみた。

イギリス。カトリックの上品な小学校から地元の白人の労働階級の子ばかりの中学校に進学した子どもをめぐるエッセイ。

イギリスは階級社会がひどいからなあ。日本でも「団地のこと遊んじゃダメ」とか「あの子の家入っちゃダメ」とかあるか。被差別階級だったり移民だったりする子に対する、いじめとか、低所得層の子が服に困っていても同情しているようで手を差し伸べづらかったりとか、いろいろ大変だなと思ったけど、日本もそうなって行くのかな。てか既になってるよな。でも人は同情されるのが嫌いだったりするから自分から助けを求めるのってすごくハードル高いし。

 

去年の冬、きみと別れ中村文則

 面白かった。引き寄せられるように一気に読み終わってしまった。

わざと混乱する構造で進む物語、不自然だった伏線を次々回収していき、まさかの結論にワクワクした。ミステリー全然読まないから叙述トリックにまんまとハマった。でも種明かしされてそれを確認するためにもう一度頭から読むほどかと言われると首肯しかねる。内容がどぎついからね。もっかい読むのが楽しいだろうことはわかる。

 

はるがいったら(飛鳥井千砂

小説すばる新人賞受賞作。つまりデビュー作。すんなりさらさら読めた。重くないので心にも優しい。

少女漫画をそのまま小説にした感じ。表紙がいくえみ綾なので、なんならコミカライズしてくれれば買う。

14歳の犬のはるが死ぬのだけれど、うちの犬も先日14歳になったので、なんか寂しい気持ちになった。

園に対人能力がないのはその通りだけど、魔女への対応ってあんな嫌がらせするほどのエピソードかな?と思う。と、書いてて思ったけど、そうか、めぐみは自分を正しく正当化するために魔女を引き合いに出したけど、本当は堂島を振った園に怒りが湧いてたのかも。松田さんと仲良さそうだったし。なるへそ。

つーか最近読む小説に不倫と浮気が出てきすぎる。現実でもそんなにみんな浮気してるのかなあ。わたしが知らないだけなのかしらん。

 

 

失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!(大理正人)

偉人の失敗談と、その失敗で得られる教訓を子ども向けにまとめた本。野口英世孔子が面白かった。

わたしもさすがに大人だから知ってることだらけだったけど、楽しく読めた。でもわたしのもつこういう知識って、わたしの場合「小学〇年生」シリーズの付録についてた漫画などによるところが大きく、今の子どもたちはこういう偉人伝とか触れないのかなあ。もったいない。楽しいのに。

 

少年と犬(馳星周) 

直木賞受賞作。面白かった。多聞という犬の、ある意味では冒険譚だし、ある意味では紀行文だし、また別のある意味では家族小説。久々に読書で泣いちゃったよ。

震災で本物の飼い主が死んだあと、 別れた仲良しだった少年に会うために西へ向かいつつ、いろんな場所で世の中の爪弾き者の人生の最後の家族となり、その最期を看取っていく多聞の姿は本当に守り神みたいだった。

とくに、「老人と犬」の最後が好きだと思った。

うちの犬は野に放たれたらすぐ死ぬ。

 

短歌の作り方、教えてください(俵万智一青窈

 

 俵万智一青窈が往復書簡スタイルで短歌の実習をしている本。一青窈嫌いなんだけど、やっぱ天才だと思った。というか言葉のプロだから当たり前かもしれないけれど。こんな伸び伸び活き活きした初心者いないよなあと。最初から破調の短歌ばかりだったし、やっぱ感性も独特。本当、天才だ。脱帽。

 

短歌はじめました(穂村弘東直子沢田康彦

 沢田さん主催の短歌同人「猫又」へ寄せられた短歌を、穂村さんと東さんが評していく本。短歌は初めての人でも、やっぱ才能ある人はあるんだなと。自分の詠む短歌がいかにありきたりでひねりがないかがよくわかった。共感と驚異。気を付けてみよう、これから。いやーほんと、わたし凡庸だよなと思わされた。

 

探偵伯爵と僕森博嗣

児童向けのレーベルから出した、子どもが主人公のちょっとミステリー。文体が独特で面白かった。作者の温かみみたいなものが感じられる小説だと思う。

あいつが犯人だと思ってても、どんどんストーリーが進み色々分かってきて面白かった。最後は予測してなかった。またやられた(笑)

読んでいる子どもたちにとっては、いろんなことを論理的に考える「考え方」みたいなものがみにつくのかも。

森見登美彦の「ペンギンハイウェイ」は、この小説から着想を得たと思う。オマージュってわけではなく、話の骨子が似ているというか。

 

虐殺器官伊藤計劃

再読。やはり凄まじかった。

わたしはチョムスキーが結構好きで、言語生得説を支持しているので、ジョン・ポールが言う「虐殺の文法は本当にあり得てもおかしくないと思う。怖い。

いろんなロジックが怖かった。いちいち説得力がある。

ラストはものすげーマザコンってことでいいんかな。わたしの中ではそうなった。そう思って読むとまた別の感想が生まれる。わたし「結局お前のマザコンかよ」みたいなの割と好きで、ミスチルの「放たれる」とかもすごく好き。

 

風の歌を聴け村上春樹

久しぶりに読んだ。軽く10回以上読んでると思う。

虐殺器官が精神的な侵襲性が高かったので、サラッと流れるように読める小説として読んだ。

この小説をはじめて読んだのは中三のときで、それまで「いちご同盟」とか読んでたわたしには衝撃的だった。

ストーリーというより、写真っぽい描写。誰も誰かに深く入り込まない。今読むともちろんその後の功績を知っているから「サイコー!」と言うわけではないのだけれど、この小説に芥川賞あげなかったのは恥じるべき。

小説そのものが読者に深く介入しないでくれるから、モノクロの活動写真を眺めるように淡々と受け止めることができる。

あらゆるものは通り過ぎる。誰にもそれを捉えることはできない。

僕たちはそんな風にして生きている。 

 

これがこの作品のトピックセンテンスだと思う。

今本人がこの一節をどう思っているか知りたい。デタッチメントからアタッチメントって村上春樹周りの人も読者もわたしも思うけど、まあ表と裏。描いていること、目指していることは、それほど変わってないのかなとも思う。騎士団長読んでないけど。多崎つくるでギブアップしてしまったので。あとなげぇ(笑)

 

ファイトクラブチャック・パラニューク

男のリスカ

最初ついていくのちょっと時間かかったけれど、最後まで面白く読めた。

ファイトクラブって男のリスカなんだなあと思いながら読んでいた。そう遠くないはず。

結構序盤で「あ、タイラー実在しないな」と思ったんだけど、幻覚じゃなくて二重人格だった。交代人格が主人格を乗っ取っていくのは、本人としては認めたくなかっただろうし、恐ろしかっただろうなと思う。

ファイトクラブは元々クラブ自体が自己目的化されているのに、それが「自己」を超えて周りに影響する、別の何かの目的のために暴走する、主人公はその首謀者たる交代人格のタイラーを殺す。まあ最後の理性だよなあ。

ラストもなんか不穏だけど、この不穏さが世界への恐怖とか拒否、拒絶なのかなと思った。

 

幸福な食卓瀬尾まいこ

普通だけどちょっと歪だった家族の再生の物語。しかし……!

 お父さんの自殺未遂後しばらくして別居することにした母、ある日突然お父さんを辞めて仕事も辞めて薬学部を目指して受験勉強を始める父、何でもできるのに農業を営む兄とその破天荒な彼女、そして平凡な妹である主人公。

一人一人が考えて悩んで答えを決めて前に向かって進んでいく中で、でもそうかーそうきたかーって言う結末で、わかるんだけどなんかもったいない気がした。この作品だったら、もっと“幸福な”結果もあり得たんじゃないかなとか思ってしまう。

って違うか。アンチテーゼなのかなタイトル。

 

映画化に際しての主題歌はミスチルの「くるみ」を編曲し直したもので、物語にあっていると思う。

引き返しちゃいけないよね

進もう君のいない道の上へ

 

カラフル(森絵都) 

多分敢えてハートウォーミングな小説。

オチは序盤で分かる(そうでないと周りが不幸すぎるから)んだけど、丁寧に描写してゆくので、「はいはい」感はあまりない。

もっと別に結果もあり得たけど、主人公がいろんなことや相手に本気で向き合っていくことで成長していくさまはそれなりに心打つものだった。

 

ハーモニー(伊藤計劃) 

 

 再読。近未来のディストピアの話。 すごい面白かった。「虐殺器官」後の物語。だけど読んでなくても大丈夫。

手塚漫画の描いた近未来を限界まで振り切った感じの話。救いが一ミリもない。

意識の研究をしていた人たちが、突き詰めれば意識や意志なんてなくてもそれがまるであるかのように生きていけるっていう結論に至ったとき、どんな気持ちを抱いたろう。ちょっとダンガンロンパ2の狛枝凪斗のときとおんなじ悲しい気持ちになった。ミァハはどんな気持ちで死んでいったんだろう。

 

風が強く吹いている(三浦しをん

読み心地の良い青春小説。

走が主人公の割に喧嘩っ早くてヒヤヒヤした。成長してよかった(笑)

最後箱根駅伝本番の各選手たちの描写がとても良かった。

スポーツってほぼやたことがない(バド2年)んだけど、これ子どものころに読んだら何かやりたくなったかもしれない。大人になった今読むと目頭が……

 

夏への扉ロバート・A・ハインライン

かつて夫のメルアドが「thedoorintosummer」だった。まあそれだけだけど。

お見事と言うしか無い。欠点ある?

最後の畳み掛けは爽快。ベルの設定がすごいと思った。喧嘩のシーンとかは海外ドラマを思い出しながら読んだ。

2000年がこの通りだったらどんなだったろうな。

 

東京すみっこご飯 楓の味噌汁(成田名璃子) 

すみっこごはんシリーズ完結編。

そうそうこういうのがいいんだよ(五郎感)。

これまで色々な人をそのまま受け止めて人生を後押しする話ばかりだったので、うまくいかなかった「瑠衣」や「瑛太」の話はおどろいた。でもこれが本来だよなあとも思う。楓ってなんか隙がなさすぎて余裕ない人には一緒にいるのしんどいだろうし。瑛太の話は夢を見てうまくいってて最後に突き落とされたからすごい悲しさとか悔しさとかだっただろうなとおもう。

母のようになりたいと思ってる楓を一瞬挫折させることで、最後父ちゃんは語るかあちゃん(万能では無い。欠点も沢山あった)にシンクロさせるつもりで落としたんだと思うし、ラストもこれでいいと思うけど、ただただ瑛太がかわいそうだった。

 

私はあなたの瞳の林檎(舞城王太郎

4回くらい読んでる。

「私はあなたの瞳の林檎」「ほにゃららサラダ」「僕の乗るべき遠くの列車」の三作。ほにゃららサラダはあんまり好きじゃないんだけど、後の二作とりわけ「僕の乗るべき遠くの列車」が好き。どっちとも思春期の未分化な恋の話。わたしは夏央が好きすぎる。主人公と夏央が号泣するシーンがとてもよい。

 

児玉まりあ文学集成(三島芳治)

手塚治虫文学賞ノミネート作品。すごい静かに面白い。

不思議系ラブコメ

笛田くんが児玉さんを好きで認めてもらいたがってる一方で、児玉さんが笛田くんを好きまくっているところが良い。

すごい独特で、現実感が一切ないのに、キャラクターたち魅力的んな様と言ったら!

最後、児玉さんの写真として井上さんがちゃんと写ってる写真を持っていて、笛田くん分かってたんか、と。

 

レストー夫人(三島芳治)

この作者の空気感好きだなあと思う。内容も一直線じゃなくて、解釈の余地を残しまくりなところもよかった。登場人物が、大袈裟さがないのにみんなとても独特で魅力的。

 

木曜日にはココアを(青山美智子)

少しずつ重なり合った物語の集まり。 一話一話が短くて読みやすい。みんな色々抱えてるけど、幸せになるといいなと思える物語だった。ココアが飲みたくなった。 

 

三島芳治選集(つゆくさ)(三島芳治)

うわーわたしこの人すごい好きかも。空気感と、個性めちゃくちゃすごいのにおおげさにならないのとか、一直線じゃない、物語とか、その話のルールもすごい入ってくる。

「いとこリローデッド」と「まほう中学」がかなり好きになった。解釈の余地しかない。

 

1日ひとつだけ強くなる(梅原大吾

日本初のプロゲーマーの梅原さんの本。格闘ゲームだけでなく、人生に汎用性のある話がたくさん載ってて結構なるほど感のある作品だった。変な自己啓発本読んだりするより納得感味わえる。へーそうなんだっていう意外な面とかもあったり

 

ID:INVADED(作小玉有起、原作舞城王太郎) 

SFなんだけど、これだけ複雑なものはもう理解できないみたい。薬が憎い。

 

世間とズレちゃうのはしょうがない

 理屈っぽい二人の対談本。伊集院光が楽太郎(今の円楽)の弟子だったの初めて知った。

 

セカイ系(名倉編) 

読み直しが必須の小説。2回読んで意味を把握した。

ラノベもなろうも読んだことなかったから最初疲れた。

終盤のメタメタしてるところは、いろんなことがどんどん明らかになって、そうなのか!みたいになって二周目読まされる小説。

この小説のホントの意味はこの小説の存在意義なんだろうなあと、分かったような分からないような感想で締〆。

 

魔法使いのハーブティー(有間カオル) 

ウェルメイド。

親がいなくて親戚をたらい回しにされてる勇希ちゃんが住所を間違えてそのままそこに下宿する。

いろいろんを問題を抱えた登場人物が心を開いて集まって仲良くなっていくのは面白い。

最後、自分で考えた希望をことばにできるようにんなっていて、よかったあ。

 

推し、燃ゆ(宇佐美りん)

読み始めてすごくびっくりした、骨太の文章たち。

タイトルがキャッチーなのでもっと軽い小説かと思ったら、ど純文学で面食らった。文藝らしく、「あー文藝だよなあ」と思った。1時間程度で読める分量。

一ミリも救いがないラストでなんか自分と重ねてつらかった。境遇も気持ちも全く違うけど、このなんか、人生のうまくいかなさとか、ぶん投げるものを瞬時に判断して家が汚れないものにしたりとか、もどかしさがすごくよかった。

なんか久々に骨太の文章読んだなあ。お見事でした。

 

ウメハラ FIGHTING GAMERS(西出ケンゴロー)

普通にスポーツ漫画として面白かった。

ウメハラさんになんの予備知識もなかったから、「こんなにクールだったのか……!ってなった。格闘ゲームやってる人が見るともっと面白いんだろうなと思う。でもルール知らなくてもノリで読めるから大丈夫。楽しい物語だった。

 

東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にはかなわない(ときど)

これはね、ムカつく人結構いると思う。素直なんだもの。

成功したから言える系の話は、誰かの失敗の上に成り立つから、正直すぎると刺さる。

でもときど氏の幼少期からプロに至るまでの人生にはまあ色々あって、本人も自分が悪かったって言ってることも多くて、こう、怒れるポイントはないんだけど、勉強大してせずに、麻布→東大って書かれてるだけでも怒る人はいるかも。

わたしもなにかについて情熱を持って当たった出来事ってあったかなあとか思うんだけどなくて、寂しいもんだなあって思った。これからの半生、何かそういうもの見つけたいな。

 

私の頭が正常であったなら(山白朝子)

日常の中のホラーな短編集。くそこわかった。

解説を読んで驚いた。「なんだよー」っていう感想をみんな持ちそう。

表題作はなんだか小説全体にすごい寂しさとか、必死さとか、苦しさとかが充満してて、だいぶ序盤から泣いてしまった。

もうホラーはいいや。怖いもん。

 

喪男と喪女が付き合ってみた話(納豆まぜお) 

結構かわいかった。