殺し屋シリーズ第3作。
兜はひどい恐妻家。表の顔は文具メーカーの営業職だが裏の顔は純然たる殺し屋。家族のためを思って殺し屋家業から足を洗おうとするが、仲介役の「医師」からそれを却下され続けている。
渋々依頼をこなす中で、昼間に知り合った知人と友達みたいになってみたりするが、殺し屋という事実が邪魔をする。あるとき知り合った相手がまさかの……
第1作、第2作は様々な人物に視点が移動したが、本作は前半が兜、後半がその息子の視点でほぼ一定。なので、少しずつのヒントがいろんな角度から出てくるのではなく、兜から見た事実、息子の克己から見た事実が物語の核を成す。
きっとそうなのかなと思ったら違ったりそうだったり、安定の伊坂幸太郎。最後の伏線回収は見事……なんだけど、今作の場合、なんかちょっとだけ釈然としない。克己が物分かり良すぎる。
それはさておき本作は、単なるミステリにとどまらず、家族小説でもある。兜が、どんなふうに妻を家族を愛してきたか、克己がそれをどう理解していくか。さらに青春小説でもある。兜は友達ができたのかもしれなかったのだったのだ。
++++
子が父の死の真相を探るみたいな小説がたまにあるのだが、その気持ちがわたしはよく分からなくて戸惑う。死んだものは死んだもので、もう生き返ることはないのに、死の意味や契機を探って何がしたいんだろうかと思ってしまう。
きっと納得したいのかもしれない。けれど、納得できない事実が出てきたら、ひどい裏切りが発覚したら、そのときどうするのだろう。
本作では父は殺し屋だった。克己はそれをはっきりとは知らないが、物騒なことに巻き込まれる段階である程度察しはついたのかもしれない。察しよすぎんかと思ってしまったが。
この作品が妙に爽やかさにかけるのは、この先克己がどうやって生きていくのかを考えてしまうからだ。絶対父の死の真相を探らない方が良かった気もするけれど、自殺じゃなかったと知れただけでもよかったといえばよかったのかもしれないし。いずれにせよ、こんな秘密をいつまでも一人で抱えていれるだろうか。
とかいろいろ考えてしまった。
↓X↓
さくらんぼのタネ噛んじゃって歯が折れたんだけど、明日でいい歯医者?
— mah_ (@mah__ghost) 2024年6月13日
↓bluesky↓
ブルースカイが人気になってしまう
— mah_ (@assa-ghost.bsky.social) 2024-06-13T01:32:37.933Z