猫になりたい無職の休日

遅刻でもいいから行こうかな

MENU

【読書感想】人間たちの話 / 柞刈湯葉

「冬の時代」「たのしい超監視社会」「人間たちの話」「宇宙ラーメン重油味」「記念日」「No Reaction」の6作からなる連作短編集。

「冬の時代」では、日本中が雪、氷の覆われた世界でヤチグモ、エンジュの二人が南へ向かう。あるとき自律走行する除雪車に出会って……

「たのしい超監視社会」は、ジョージ・オーウェルの「1984年」のパロディ。相互監視は点数制でよりよい点を取ればよい人生を送れる社会。相互監視メイトの薄井澄人と大村は、あるとき、街コンへ行く(20歳以上の国民は健康的かつ真剣な男女交際が義務付けられている)。

「人間たちの話」では、最高に恵まれた生まれの科学者新野境平は物心ついた時から深い孤独を感じていた。幼少期は化石の発掘ツアーなどに参加し、この地球に確固たる異質が存在していたことを見出し、人生の糧としていたが……

「宇宙ラーメン重油味」は、どんな星系の客にも飯を出せる地球人が営むラーメン屋の話。

「記念日」では、あるとき大学教員の主人公が家に帰ると、白いスベスベした岩が部屋に鎮座していたことから物語が始まる。主人公はやがてこの白い岩にさまざまなことを語りかけるようになって……

「No Reaction」は、透明人間の少年の話。人間界の物質に作用を受けるが作用を与えられないという特性を持った透明人間。幽霊ではない、生身の人間としての透明人間である「僕」は、実際の年齢に合わせて学校のクラスへ行き、授業を受けている。そんなあるとき、女の子が転校してきて…

 

<全体の感想>

レヴェルたっか。このクオリティでまとめられたSF小説を6作も読めて大変満足だった。

 

<ネタバレあり>

「冬の時代」は、ひたすらヤチモグ(子供の方)がかわいくてかわいくてかわいくてよい。ロードムービー的な感じなのだけれど、ラストが最高だった。

トンネルを抜けると、そこはまだ、雪国だった

この「雪国」のパロディからの、最後に二人のやりとりがかわいくて底抜けに明るくて最高だった。

「たのしい超監視社会」は、「1984年」のパロディだけど、SNS社会についての鋭い風刺でもある。
監視と言うと窮屈で不便で不都合なものだと思われるが、この物語の登場人物たちはなかばそれを楽しんでいる。監視をかいくぐる話法を作り出して話したり、任意監視のフォロワ数(youtubeのチャンネル登録者数的な感じ)を気にしたり。すごい面白かった。緊張感もなく、じゃれている若者を眺めている感覚。「楽しさと戦う」ことは確かに困難。自由とプライバシーを犠牲にしていることにも気づかずFF数を誇っていく現代人のよう。

「人間たちの話」は、いやこれ分かる気がしたって思った。地球上の生き物はみなある一つの細胞から生まれたいわば「同じ生物」だから、そうでないものを宇宙に求める。あまりに孤独だから。あまりに偶発的すぎるから。

宇宙のどこかに他の生命体が存在することで、自分たちが生まれるべくして生まれたものだと、信じることができる。

「宇宙ラーメン重油味」は、サラリーマン小説っぽい感じも良かったし、話のオチが最高だった。マルちゃん、お前だったのか。

「記念日」は、最後、岩を家族のように思っているのがなんかよかった。人間には死ぬ機能が備わっていると言うことにちての言説がなんかよかった。人間の体は全体のために個が死ぬことがある。

「No Reaction」は設定からしてめちゃくちゃ良かった。透明人間というと普通物理法則を無視してすり抜けたりかと思えばものを持ったりもするけれど、人間界の物質に作用を受けるが作用を与えられない、という設定がよかった。最後に、「暗黒物質人間」になっててめっちゃ面白かった。透明人間やダークマター人間が本当にいても分からんよなとか自分は人に見えてるんだよな?とか考えた。