唐突に話を始める。
先月角川武蔵野ミュージアムへ遠征し、ダリの展示を観てきた。あの展示を鑑賞した人の多くがみんな「いやそうじゃない」と感じたことだと思う。「学芸員もっと頑張ってくれ」と何度も思った。そう、美術館、博物館の展示には学芸員の方の頑張りが反映される。
そんな折、知った企画展。それが「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」である。これは、さまざまなテーマにそって、パリのパリ市立近代美術館、東京の国立近代美術館、大阪の大阪中之島美術館がそれぞれ所蔵する作品をそれぞれ提示していくという企画展で、まさに学芸員の頑張りというか気概というか「本気」としか言えない展示だ。
行ってきた。
TRIOはダブルミーニング。
全部で34のテーマでTRIOが組まれている。
このように、テーマごとに絵画が展示されている。
たとえば15番目のテーマはこれ。
15 モデルたちのパワー
大胆にくつろいだポーズで寝そべるモデルたち。
西洋絵画における横たわる女性像は、理想美を体現し、男性に見られる対象として、しばしば無防備に描かれてきました。
しかし、肘を曲げ、堂々とした姿でこちらを見返す萬鉄五郎の裸婦、挑発するようにこちらを見つめるモディリアーニの裸婦、椅子によりかかりこちらに眼を向けるマティスのオダリスクには、
私たちの視線を跳ね返し、それぞれの美を誇るようなパワーがみなぎっています
学芸員が本気で組んだそれぞれのテーマに沿った"TRIO"。テーマの選出から絵画の選出まで、美術館初心者のわたしにとっては、新たな視点、新たな絵画、新たな画家との出会いがあった。
これとか。
そもそも美術館とはどのように絵画を鑑賞すればよいのかよく分からないといった人も多いと思う。立ち止まってじっと眺めている人を見て「一体何をそんなに子細に眺めているのだろう」と思ったりする。きっと知識があるからだろう。細かい筆致の緻密さ、時代を象徴する描画、すさまじい個性、そういったことをすべて含めて鑑賞しているのかもしれない。
だがわたしにはそんな知識はない。
そうしたときに学芸員の書く説明が重要になる。まるで知識がないわたしたち美術館初心者が観ても、なぜその作品に価値があるのか、その作品のどこに着目すべきなのかがわかる。歴史的な、あるいは画家の個人的な背景まで含めて作品を楽しむことができるようになる。
そうした意味で、今回のこのTRIOの展示は鑑賞しやすかった。そういう言葉でいいのかは分からないけれども、すっと世界に入り込めた。
テーマで選出しているので、視点の変更など一定作品の再解釈があったんじゃないかと思うのだけれど、観るべきポイントが分かりやすくて一つの絵をスルーするのではなく鑑賞することもでき、また三作品を比較することでそれぞれの意味もより深く味わうことができたのではないかと思う。
というわけで、お仕着せの展示やうっすい展覧会に辟易した方がいたら、こちらの展示はおすすめ。空いていてすんなりと鑑賞できるのも気楽でよかったです。
わたくしからは、以上です。
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全部地球は見ているとモーニング娘。も歌っているよ。
— mah_ (@mah__ghost) 2024年6月9日