第二歌集。
元彼なのか、思いを明かさずにいた男友達なのか、何人かの男の子が出てきたように読んだのだけれど、あれは全部は同一人物じゃないと読んでいて(時系列で書いてあればだけど)、恋とかをしたことが遠い昔すぎて、そういう気持ちになったっけかとか思いながら読んでいた。
好きな歌をいくつか。
百年も前からずっとそうだったみたいに花と花瓶の十日
これはみんな大好きなはず。
買ってきたorもらった花を花瓶にさすと、もうこの花のためにあったんじゃないかっていうくらい花瓶と合う。それはまるで百年前から一緒だったみたいに。だけれど現実には十日でお別れすることになる。そしてまた新たな花を生けては十日経ちを繰り返す。
恋のメタファーなのだと思うけれど、期限を区切ってしまうところに寂しさと諦めがある。
ローファーの乾いた音を確かめるように下っていく初夏の坂
梅雨明け。ローファーでトットッと歩く乾いた音が響く。なんで下りなんだろう。と思ったけれど、やっぱりここは颯爽とした感じを出したいから、上りじゃないなと。ゆっくりゆっくり下ってく感じなのかもしれない、徒歩だけど。
夏が好き すべてのものが永遠のような顔してそうじゃないから
たしかに夏って、何もかもが生命力に溢れ、衰えていくことなど知らない様子だ。花も、太陽も、雨も、街も、ファッションも、子供達も。けど実は永遠じゃない。誰もが知っているが、何もが有限だ。ってことを「寂しい」じゃなくて、その傲慢さを「好き」と思っているのがよかった。分かる、と思った。
宇宙、夜、街の暗闇 外側へ溶け込むようにきょうの消灯
宇宙、夜、街の暗闇、と意識が遠いところから降りてくる感じがある。外の暗闇と直接は書かれていない部屋の明るさのコントラストがとてもよかった。そしてそこから、部屋も消灯をして自分自身も宇宙や夜や街の暗闇の一部となる、ほっとした感じになる。
スノードームのなかの小さな遊園地 声帯はもう君を忘れて
この歌が入っている一連では、君を思い出したりしているのだけれど、どれだけ思い出したとしても、もう名前を呼ぶことのない声帯はとっくにその君の名前を忘れてしまっている。声に出さないから。その途方も無い寂しさと、ぎゃくに清々しい感じもあって、心に残った。
ということで、もう恋愛から遠かったジャスフォーのおばさんにはかわいらしくて心地よい歌集だった。等身大って感じ。
